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【1】新連載コラム 『フクチャンのアマゾンニュース解説』
この悠久の大地アマゾンへ、男のロマンを求めてたくさんの男たちがやってきました。
1996年、(社)日本ブラジル交流協会派遣ブラジル研修生としてベレンの木材関連会社で一年間研修、そこでアマゾンの開発と保全の生々しい現場や、現地の大学やNGOとの交流の中から、人間と自然との共生のあり方を学び、帰国後東京大学林政学研究室博士課程へ進み、現在リオデジャネイロ連邦農科大学研究所研究生として活躍中のフクチャンこと福代孝良氏に「アマゾン・ニュース解説」と題するコラム連載を担当いただけることになりました。アマゾンに魅され、その未来にロマンを求めて活躍中の若き学者の視点でのアマゾン・ニュース解説にご期待ください。
福代孝良氏略歴
東京大学林政学研究室博士課程
リオデジャネイロ連邦農科大学森林研究所研究生
第一回「アマゾン森林破壊の現状」 2003年7月12日
ブラジルアマゾンの森林消失が加速している-
この6月下旬、INPE(ブラジル国立宇宙研究所)は、昨年2001年7月から2002年6月までの一年間にブラジル法定アマゾン地域で破壊された森林面積が、前年度の約1.4倍の25,476平方kmと推定されると発表した。
今回発表された推定面積は、同研究所の衛星によるモニタリングがはじめられてからの過去15年間で二番目の規模であり、日本の首都圏面積(東京千葉埼玉・神奈川)の約2倍にもなる。これまでにブラジルアマゾン森林の約15%、63万平方km、イベリア半島よりも広大な面積が失われた。このうちの4分の3の約48万平方kmは、1978年以降に破壊されたものであり、このスピードで森林破壊が続くと、約200年でアマゾンはなくなってしまう計算となるが、実際は国有林又は保護地域(全体面積のほぼ60%)が存在し、砂漠化とか、なくなることはありえない。国家主導型の森林開発時代の70年代80年代は、国家レベルでの大規模公共投資に加え、森林開発をともなう経済活動に税制・金融のインセンティブが与えられていた。この頃の10年間78年から88年の間でも年間平均は21,130平方kmであったとされている。
その後は80年代後半から森林消失は若干減少したが、90年代は政策が開発から環境重視に転換されたといっても、未だ法整備や制度面での不備が多く、開発時代の名残も残っていたともいえ、95年のレアル計画導入後の経済安定期に過去最悪の29,059平方kmという大きな峠を迎えた。その後は小さなピークがあったが、90年代後半から今世紀に入ってからは、罰則や取締りの強化が図られており、この4年間はずっと1万8千平方km程度で推移していた。また、このところは経済も収縮気味の状況である。それにもかかわらず、国家的な開発の行われていた80年代よりも広大な森林破壊が進行しているということが明らかになったのである。これまでの対応策を根本から見直す必要に迫られている。6月末には、環境大臣をはじめとし、他のアマゾン開発にかかわる農業や交通・輸送にかかわる閣僚間会議、および関連研究所、NGO等のミーティングが開かれた。
忍び寄る森林破壊-
これまでのモニタリングでの森林破壊が収縮傾向にあると評価されてきたことに対して、異論がなかったわけではない。 1999年4月にネイチャー誌に発表されたNepstadらによる研究では、衛星によるリモートセンシング解析技術は伐採や森林火災によるの森林の劣化・消失を正確に認識できず、実際に生じている森林消失の半分程度しか把握していないとし、数字には表れない「忍び寄る森林破壊」の存在を指摘していた。公式には、森林破壊は収縮傾向と見られることもあったが、実際はNGOや研究機関からの同様の警告は常に存在していた。決して突然、森林破壊が進んだわけではない。
とりわけ深刻なのは、アマゾン「森林消失のアーチ」と呼ばれる地域である。このアーチは、パラ州北東部から南へマラニャオン南西部とトカンチンスを通過し、マトグロッソ州北東部入って北に向いロンドニア全土を通過してアクレ州東部に至る地域で、アマゾン開発最前線として、広く知られている。破壊の原因は、拡大する大豆栽培から、農牧地造成、違法木材伐採等々様々な要因が挙げられているが、2002年のレアル貨幣の大幅な下落が、木材や大豆の輸出向け生産拡大を刺激したと考えることもできるかもしれない。関係当局は「これらの森林破壊の要因になる活動は、すべて違法というわけではなく、合法的な入植や経済活動も多い」とコメントしている。また、大豆、木材のみならず、牧畜、綿花、米、牧畜等々多様な産業の拡大しているとの意見もあり、さらに零細の農業者の入植や入植に伴う違法木材生産も拡散していると見られている。
一つ明らかなことは現在の森林破壊の原因は70年代、80年代の大規模開発のように原因を特定しやすいものではなく、多くの様々な要因が関連していることである。アマゾン森林破壊はより複雑化し、草の根で広がっている。
命がけのコミュニティフォレストリー-
これまでも家族森林農業計画や環境ゾーニング、コミュニティフォレストリー、保護地域指定の促進等々が進められてきていたが、実際このような草の根の森林破壊活動を取り込むことが出来ていなかったといえるであろう。この現状や要因については、多くの事例や様々な意見があるので、今後、時間をかけて、地道に探りながら報告していきたいが、最近、身近で聞いた話を少し紹介したい。
最も深刻なフロンティア地域は政府の手が及ばない不法地帯になっているケースが多いがこうした地域では違法開発業者によるプログラム実施への妨害が存在することもある。筆者の活動のパートナーが活動するマットグロッソ州の入植地では、コミュニティフォレストリープログラムの導入によって入植住民による森林管理がはじめられようとしていたが、ワークショップで育った住民コーディネーターが殺害された。パラ州のグルパ地域でもコミュニティフォレストリープログラムの関係者が殺害されている。因果関係は明らかになっていないが、関係社内では土地所有者や違法木材業者らによる妨害活動として伝えられている。フロンティア地域ではよく耳にする話である。このような違法開発業者も、小規模の業者が中心である。違法活動といっても彼らにとっては生活を守るためにやっていることだ。そこに正義面してくるコミュニティプログラムは受け入れられないのであろう。妨害活動があろうとも、現在もNGOや住民組織のコミュニティフォレストリーへの取り組みは進められているが、一方で、このような業者も含めたすべてのアクターを取り込んだ参加型のプロセスが求められているのかもしれない。しかし、「言うは易し、行うは難し」、NGOや政府関係者も、土地利用の合法化、住民の安定化を図るための活動は命がけである。
新しい資金調達-
一方で、比較的安定してる地域では、単なる規制や罰則のみではなく、環境的に適性で、社会的に公正な事業に対して、金利や税制の優遇等で、経済的なインセンティブを与え、持続的な事業が略奪的な事業より経済的に優位になる仕組みが必要がある。合法的で環境にも社会的にもよりよい経済活動を活発化させ、フロンティアへの圧力を減らすことも大事な政策だろう。現在、社会的責任投資ともいえるような特別な資金の育成も活発化している。このような動きは世界的に見ても拡大しており、さらに現在の地球温暖化ガス削減のためのエコファンドと連携されれば、さらに活発になるだろう。優遇政策とこうした市場の動きが一致して拡大していくことが期待される。 90年代初めに環境大臣をつとめたサンパウロ州環境局長Goldemberg氏はESTADO紙に対して、「2002年の森林破壊による地球温暖化ガスの排出量は2億トンの炭酸ガスと同等であると見積もられる。この森林破壊による排出量はブラジルの年間総排出量の3倍になるだろう。」と語った。これが事実であるのならば、地球温暖化ガスの吸収源としてアマゾン森林を認め、その森林破壊防止に直接的な効果を発揮る森林の管理作業等への資金調達の仕組みをつくることは、非常に重要であろう。このような新しい資金調達の仕組みの大前提として、政府やNGOが連携して環境的・社会的な視点での事業の監視システムも同時に構築していく必要がある。
おわりに-
ブラジルには、かつては国土の約15%120万平方kmを覆うマタアトランチカ(大西洋沿岸林)と呼ばれる広大な森林地帯があった。ポルトガル人の入植前には、ブラジルの大西洋沿岸南北に広がり、西にはパラグアイ、アルゼンチンにもかかるほどであった。それがこの500年のブラジルの歴史の中でわずか90.000平方kmになってしまった。分断化され残された森は熱帯の山岳林としてアマゾンに匹敵する生物多様性を有するホットスポットであり、ほとんどが保護地域として指定されているが、現在も開発や違法行為の危機にさらされている。このマタアトランチカの歴史を振り返れば、今後200年でアマゾンの森がなくなってしまうという試算もそれほど、大げさには思えない。アマゾンの森林破壊の現状が再認識された今こそ、政府やNGO、企業が一体となって、このような破壊の歴史の繰り返しを食い止めていかねばならない。 |