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【1】新連載コラム「浩さんのアマゾン・スケッチ」
ペンネーム「アマゾン浩」さんからの投稿コラムの連載が始まります。浩さんは二十歳でアマゾンへ、日本人移住者として原始林の開拓から始め、30年後、日系商社の部長まで上り詰めた時、期するものがあって単身日本へ帰国、10年を過ごした後、再びアマゾンへ戻ったユニークな人物で、現在ベレンで晴耕雨読の生活を楽しんでいます。
昭和30年代の日本からアマゾンの新天地、一転してバブルの頂点の日本とその後の凋落を実体験した視点からの、コラムが期待できそうです。
<浩さんのアマゾン・スケッチ>-01
【タカカの味】
風に乗って熱帯雨林の香りがベレンの街全体をつつんでいる。
街路にはマンゴ−の大樹が緑のトンネルをつくって、広大なアマゾンの入り口にふさわしい大自然の息吹を感じさせてくれる。ベレン市はブラジルの北端の街で、アマゾン河口(巾は約330km、東京〜名古屋間の距離に匹敵する)の三角州に位置し、海抜0m、人口は約150万人でパラー州の州都でもある。年間平均気温は26℃、午後になるとほとんど毎日と言っていいぐらいスコ−ルがやって来る。気温は高いがそのため凌ぎやすい気候である。
このベレンの街にはアマゾン特産の果物のジュ−スやアイスクリ−ムがあり、自然の風味を楽しむことができる。有名な郷土料理の数も多いが、中でも<タカカ>と呼ばれる食べ物はことに有名である。ホテルやレストランで注文したくても置いてない。タカカは街角や公園の片隅、盛り場の屋台でしか売ってない庶民的な食べ物である。
アマゾンの主食であるファリーニャを作る過程で抜き取った水分、つまり搾り汁をピメンタシェイロと呼ぶ薄黄色の小粒の胡椒と少量の塩を入れ、煮込んだものがタカカの調味料のツクピ−である。タカカは抜き取った水分(前述の搾り汁)を沈殿させ乾かして澱粉にする。この澱粉の¨くず湯¨にツクピーをかけ、更にジャンブ−と称する植物の葉(舌がぴりぴりとしびれる香り草)を煮て具とし、乾し海老でくず湯とツクピ−をよくかき混ぜ、フーフー吹きながら食べるのが名物のタカカだ。
このタカカはクイヤと呼ばれる日本の味噌汁椀より、やや大きめの半球型の容器で食べる。丸い瓢箪の一種をくりぬきその内側には黒いペンキを塗る。一見グロテスクで初心者は尻込みしてしまう。タカカ通になるとクイヤ以外の器では決して食べない。誰が口をつけたか分からないし、衛生的だとの保障もないがこれでないと味が落ちるとばかりにお好みのクイヤをあれこれ選んでいる。大きさは不揃いだが自分で食べれる量をこのクイヤの大きさで決めれる利点もあり、アマゾニアンの知恵が伺われてなかなか面白い風景だ。
具のジャンブーの形は小松菜に似ており味は山椒のようである。ピリピリ、スースーと揮発性の感じがする。マンジョカ芋の搾り汁のツクピーに強い胡椒のピメンタシェイロ、具のジャンブーと乾し海老、味のコントラストは絶品で棄て難く忘れられない。高温多湿の赤道直下のベレンの街角で、通り過ぎる可愛いモレーナを上目遣いに眺めながら、熱いくず湯とピリピリ、スースーは慣れればやめられない味ではある。 |